社会学評論
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特集「文化社会学の快楽と困難」
ジェンダー・セクシュアリティと階級から見た文化の社会学
髙橋 かおり中村 香住
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2023 年 73 巻 4 号 p. 382-398

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抄録

本稿の目的は,ジェンダーと階級(とりわけ高級芸術)をめぐる研究動向の整理を通じて,日本の文化社会学における新たな研究潮流をふまえて,今後の研究展望を示すことにある.

ジェンダーやセクシュアリティの観点を用いた文化社会学的研究は,時代によってその主たるテーマが移り変わってきた.メディア表現における表象の問題では対象化された女性像が議論されていたのに対し,ポピュラー文化における女性受容者の研究においては,女性の主体的欲望に光が当たるようになってきた.近年ではポストフェミニズム論や第三波フェミニズムの観点を用いた研究も盛んだ.そのうえで,今後は男性学やクィア・スタディーズの視座も用いつつ,より広い文化事象に対するジェンダー・セクシュアリティの観点を用いた分析が必要だと提言する.

一方,文化における階級を考えるならば,日本ではポピュラー文化を中心に下方の広がりを論じる傾向にあった.文化の序列や差異化を問題とする研究群においては,時代や社会状況に応じてその境界や力関係が更新され続けていることが前提にある.また,高級文化や芸術は,その非日常性が強調されつつも,生産過程においては集合的活動としての人々の日常があり,実証的調査を通じてその探究が行われてきた.さらに,芸術がもつこのような非日常性は文化社会学以外の連字符社会学において社会変化や新たな兆候を説明するための要素として扱われている.

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