社会学評論
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特集「文化社会学の快楽と困難」
「文化社会学的想像力」宣言
辻 泉谷本 奈穂工藤 保則
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2023 年 73 巻 4 号 p. 399-417

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抄録

本論文では,日本において大きな注目を集め,学生や研究者の数も増えつつある文化社会学について,その特徴と主要な潮流を明らかにしていく.文化社会学の特徴は,研究対象や視座の幅広さにあるが,それだけではない。社会の特定領域だけを対象とした研究というより,むしろ文化を通してその時々の社会の状況に迫ろうとするアプローチという点が,他の(連字符)社会学との違いである.

文化には,狭義と広義の2 つの意味があるといわれ,前者が通常の日常生活で意味するところの文化であり(たとえばポピュラー文化,大衆文化など),後者は生活様式全般や社会構造,文明といった広い意味合いをもっているが(たとえば,日本文化,西洋文化など),この点からすれば,文化社会学とは,狭義と広義の文化との間のダイナミズムを理解しようとするアプローチといえるだろう.

そして日本における文化社会学は,これまでに大きく4段階の変化を遂げてきたといえよう.第1段階が戦前の勃興期で,第2段階が戦後から高度経済成長期にかけての発展期であり,幾人もの社会学者が,独自の理論的な視座の精緻化を図りつつ,大衆文化を対象に重要な研究を成し遂げた時期であった.第3段階は,そのあとの定着期であり,文化社会学がますます広まっていった時期である.そして今日,文化社会学は第4段階を迎えつつあるといえる.

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© 2023 日本社会学会
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