2023 年 73 巻 4 号 p. 435-444
「若年男性が交際から遠のいている」という「草食化」言説は,世間に大きく注目されたが,その注目に反して量的な実証研究は多くない.本稿はコーホートごとの交際状態の推移確率を推定し,若年者の交際状態の長期的な趨勢を明らかにする.このような作業は,「草食化」言説を検討するとともに,今後の交際・結婚研究に貢献することができる.
データは「出生動向基本調査」報告書にある交際状態の集積データを用いる.推定には,制限付きの最小二乗法を用い,信頼区間の推定には,ブートストラップ法を用いる.
分析の結果,次の3つが確認された.1)全体として「交際相手がいない」状態への推移確率は上昇傾向である,2)「有配偶」への推移確率は下降傾向である,3)「交際相手がいない」状態から「恋人がいる」状態への推移確率はおおむね横ばいか,わずかに山なりに変化している.