2024 年 75 巻 2 号 p. 116-132
中レベル賃金の職が減り,高・低レベル賃金の職が拡大するという職業構造の二極化仮説が,欧米を中心に定着している.本稿は,この二極化仮説が,2000年代後半以降の日本についてどの程度当てはまるのかを,先進諸国の制度的特徴に注目した国際比較研究の分析視座に依拠し,「就業構造基本調査」の個票データを用いた分析により明らかにする.収入水準により小分類レベルの職業を5つの分位にランク付け,2007-17年の10年間における各分位の構成割合の変化を,男女,教育歴別に検討している.
分析の結果,全体的な変化として二極化は生じておらず,職業構造の中層から下層の分位が減少し,上層の分位が拡大する,アップグレード傾向が確認される.背景として,二極化の進行を左右する最下位層でのサービス職の拡大が限定的であること,そして,女性が最上位層で拡大したことがある.ただし,先行研究が示す同時期の欧州先進諸国のアップグレードに比べると,上層の分位の拡大の程度は小さい.
また,医療・保健領域の職業が,職業構造の広範にわたりシェアを拡大させる傾向が確認される.欧米諸国の先行研究では,コンピュータ技術や移民の流入が職業構造に変化をもたらす点が示されてきたが,2000年半ば以降の日本では,高齢者のケア・サービスへの需要が拡大したことが,職業構造により顕著な変化をもたらしている点が示唆される.