社会学評論
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  • ―「就業構造基本調査」の分析からみた21世紀の日本の労働市場―
    佐野 和子
    2024 年75 巻2 号 p. 116-132
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    中レベル賃金の職が減り,高・低レベル賃金の職が拡大するという職業構造の二極化仮説が,欧米を中心に定着している.本稿は,この二極化仮説が,2000年代後半以降の日本についてどの程度当てはまるのかを,先進諸国の制度的特徴に注目した国際比較研究の分析視座に依拠し,「就業構造基本調査」の個票データを用いた分析により明らかにする.収入水準により小分類レベルの職業を5つの分位にランク付け,2007-17年の10年間における各分位の構成割合の変化を,男女,教育歴別に検討している.

    分析の結果,全体的な変化として二極化は生じておらず,職業構造の中層から下層の分位が減少し,上層の分位が拡大する,アップグレード傾向が確認される.背景として,二極化の進行を左右する最下位層でのサービス職の拡大が限定的であること,そして,女性が最上位層で拡大したことがある.ただし,先行研究が示す同時期の欧州先進諸国のアップグレードに比べると,上層の分位の拡大の程度は小さい.

    また,医療・保健領域の職業が,職業構造の広範にわたりシェアを拡大させる傾向が確認される.欧米諸国の先行研究では,コンピュータ技術や移民の流入が職業構造に変化をもたらす点が示されてきたが,2000年半ば以降の日本では,高齢者のケア・サービスへの需要が拡大したことが,職業構造により顕著な変化をもたらしている点が示唆される.

  • ―儀礼理論からのアプローチ―
    加藤 慶一郎
    2024 年75 巻2 号 p. 133-149
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/09/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,「性行為」を主題として,[1]その社会学的メカニズムを分析したうえで,[2]「性的不平等」を把握する枠組を提示することである.

    「性」に関する現在の主要な議論(セクシュアリティ/親密性/フェミニズムの社会学)は,ミクロな事象である「性行為」の説明としては不十分なものに止まっている.そこで本稿が依拠するのは,性行為を「儀礼」として理解し分析するアプローチである.その際,慣用的な「性」の概念を,その時空間的位相に応じて「性的所為/性行為(=性的相互行為)/性的関係」に分節化して検討する.それによって,「性的所為」に喚起された性的興奮が性行為の儀礼的過程を介して増強されること,また「性的関係」は互いの身体の性的部位を「聖なるもの」とすることで相互的な結びつきを強化することが明らかにされる.

    また,本稿は性的不平等を「感情エネルギー」の非対称性によって把握する.その非対称に関与するのは,性行為の「悦び」と隣り合わせに存在する「危険」である.具体的には,性行為が不確定な要素や日常的な人格の聖性の侵犯によって魅力的なものになるという特性が論じられる.

    最後に,性的不平等に関する本稿のアプローチの意義が,「性的同意」の議論との比較によって検討されるだろう.

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