社会学評論
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脱家族化論の統合のために
―福祉レジーム論とフェミニスト福祉国家論の併存を越えて―
大木 香菜江
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2024 年 75 巻 3 号 p. 190-204

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抄録

脱家族化論は,1990年代に家族の育児や介護にかかるケア負担を緩和させる働きをみるものとして,Esping-Andersen の福祉レジーム論とそれを批判し新たに家族の視点を加え入れようとするフェミニスト福祉国家論のなかで展開された.しかし,1990年代以降の脱家族化論が福祉国家と家族の関わりを分析するという同一の問題関心をもって出発するにもかかわらず,2つの学術動向に分断されたままに1990年代に脱家族化の概念形成がなされ,脱家族化を用いた実証研究へと発展し,相互議論の場が設けられることがない.そこで本稿ではまず,1990年代以降に展開する前者と後者の脱家族化論を整理し,これらが分派して発展し続けていることを指摘する.福祉国家比較研究においてメインストリーム研究といわれる前者が,1990年代前半に展開していた後者の脱家族化概念を見落としたことをきっかけに,脱家族化論の分派が生じ,後者によっても前者の脱家族化概念が参照されないことで両派の併存が継続したのである.つぎに,2つの潮流のどちらかに立脚する一面的な脱家族化論の理解によって福祉比較研究において南欧と東アジア地域における脱家族化の内実が十分に理解されずに処理されることを指摘する.2つの脱家族化論の併存を乗り越えた相互検証的な研究をすることで,両地域の家族政策策定により有益な議論がもたらされることが期待されるのである.

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