社会学評論
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支配関係の分析枠組
犬塚 先
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1979 年 30 巻 3 号 p. 2-16

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抄録
社会関係の中で、利害状況を背景に持ち、またそれと何らかの形でかかわっている領域を分析するための概念を提示する。これらは、従来、権力論として扱われてきた問題であるが、それらを支配論の下に整理し、社会学の概念として確立する一つの試みを行なう。
まず理論的位置づけとして、社会構造の一側面として支配構造を考える。そして、支配構造は支配者、支配関係、支配過程から分析されうるが、ここでは主に支配関係に焦点を当てる。支配関係の中核は権力関係、つまり権力諸手段の行使である。これは「暴力」、「財力」、「権威力」、「属人的勢力」の四種類に区別される。そしてこれを基礎として、上下関係を本質とする支配が行なわれる。支配関係、すなわち支配従属関係は、両者の間に「決定」という媒介項を置いて分析される。これが支配対象の特有な性格を解明する中心概念となる。決定領域が存在する場合としない場合とで支配関係の質が大きく異なる。更に、これらの支配関係は利害対立の程度、正当性の度合と内容、目標の一致度によって多様な性格を示すことになる。
しかし又、支配関係は単独に存在するのではなく、諸要因の連鎖関係の中に置かれている。それを支配状況と呼ぶ。そして、この面から支配関係は依存-権力関係、委任-権力関係の二類型に区分され、これが支配構造の内容へとつながっていく。
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