社会学評論
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女性の職業生活と性役割
平野 貴子神田 道子小林 幸一Joanna Liddle
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1980 年 30 巻 4 号 p. 17-37

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抄録

女性の職域の拡大、男女平等化が課題になってきているが、その実現には多くの困難がある。社会的地位が高く男性と同じ職業能力を要求される専門的・管理的職業に従事する女性を中心にして、就職・昇進における不利な状態、およびそれを乗り切る態度を性役割の視点から分析した。就職における不利は、募集、応募、採用の各段階でみうけられ、就職ルート、職務領域、配偶上の地位によって異なり、女性の役割に関連の多い領域では不利が少ない傾向がみられた。昇進における不利は、転勤・異動のしかたに典型的にみられる、男性と女性の労務慣行上の違いによって生じていることが多い。また女性が男性の上に立つことを嫌う社会慣習の影響がみられる。これらの障害には性役割、とくに性別役割分業観および分業実態が影響している。
職業生活におけるこれらの障害を乗りこえていく際には、男性の評価規準に適合する実績をあげる積極的態度と、家庭役割が重い場合に、昇進や実績をあげる機会や条件を自分から見送ることによって職業を継続していく消極的態度がみられた。これらの分析を通して、女性役割との関連からみた職業 (職務) 領域と、進出する女性の側の条件としての女性 (家庭) 役割の大きさの関連によって、女性の職業進出パターンおよびそれにもとづく進出過程についての仮説を導き出した。進出初期の段階では、女性の役割に関連が多い領域に未婚で進出し、もっとも困難が多く進出がおくれるのは、女性役割に関連が少ない領域に子どもを持ち進出するパターンである。

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