社会学評論
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M・ウェーバーの「都市の類型学」
方法論的分析
大内 田鶴子
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1982 年 32 巻 4 号 p. 20-34

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抄録

今日まで「都市の類型学」をM・ウェーバーの科学方法論と結びつけて解釈する試みは殆んどなされていない。しかし、ウェーバーがG.フオン・ベローに宛てた手紙と、「古代農業事情」の末尾に付けられた注の内容とに注意してみると、「都市の類型学」は因果帰属の問題と関連をもつように思われる。特に後者は都市比較論についての覚書であり、その方法的手続は論文「文化科学の論理の領域における批判的研究」で展開されている客観的可能性判断と適合的因果帰属の思考図式に対応している。このためウェーバーが都市の歴史的具体的研究を行いながら並行して、客観的可能性判断と適合的因果帰属の方法論的実験と試行錯誤を繰り広げていたことが考えられる。「都市の類型学」の錯綜した構成はその結果であろう。このような観点から「都市の類型学」を方法論的に精査し合せてウェーバーの論理学的な主張を再検討すると次のような諸問題が明らかになる。第一に、「都市の類型学」はウェーバーの歴史学的接近法から独自の社会学的接近法への方法論的転換期に位置づけられる。第二に、右の位置づけの論理的基礎づけをそれが与えるのであるが、客観的可能性判断と適合的因果帰属の思考図式は、「理論」と「歴史」との関係を明らかにし、社会学の理論の性格を理解する上での示唆を与えている。

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