社会学評論
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戦時下の部落支配構造と農事実行組合
北海道深川市納内第三部落の事例研究
佐藤 三三
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1982 年 33 巻 3 号 p. 2-19

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抄録

農山漁村経済更生運動以後、農業・農民政策の基調は、耕作農民の保護・直接的掌握へと、明確な転換を示した。但し、私的所有を否定して土地所有の根本的変革にまでせまるものではなく、生産力主義的変革内で行われたそれであった。ここに国家の農民支配が、内務省による政治的組織としての部落の活用と、農林省による経済的組織としての部落 (農事実行組合) の育成・活用という、部落の二元化をもたらした根拠がある。しかも、前者は所有から経営への基調変化を含みながらも、概して所有の秩序=伝統的名望家支配の系譜に連なる耕作地主・自作層が掌握し、後者は経営の秩序を代表する自小作・小作上層が掌握するという関係がみられた。戦時下における部落支配構造の問題は、このように国家が農民支配をめぐって示した「政治」と「経済」のズレ、「政治的部落」と「経済的部落」への二元化と統一的支配の反映のうちに理解されなければならない。

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