抄録
移動表の分析をめぐっては数多くの指数が作られてきているが、その中で最も影響の強かったものに、イギリスのグラースやアメリカのロゴフによって開発された結合指数がある。結合指数は統計的独立性を仮定することによって周辺度数の影響を除去することを目的としたものであったが、実際には周辺度数の影響からフリーでないことが明らかにされた。結合指数の欠点が明らかにされてからは、この指数はあまり注目されることはなかったが、統計学におけるログリニア・モデルの開発と、結合指数に内在する乗法モデルの発見によって、結合指数の有している欠点を克服した新結合指数を作ることが可能となった。
本稿では、結合指数の問題点を指摘し、結合指数から新結合指数への発展過程が明らかにされる。そして実際に、一九七五年のSSM調査で得られた世代間移動表をもとにして新結合指数を求め、結合指数との比較を行なう。さらに、五五年および六五年の調査で得られた世代間移動表についても新結合指数を求め、職業世襲の変化についての分析も試みる。