社会学評論
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「寄せ場」労働者をめぐる差別の構造
大阪・釜ヶ崎地域を舞台として
青木 秀男
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1983 年 33 巻 4 号 p. 2-19

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抄録

「寄せ場」労働者への仮借ない差別。彼らの内部にさえ貫徹する差別主義。この事実を直視する時、誰しも憤りを禁じえまい。社会学は、例えばこの現実をどう捉えるのか。人間主義の旗印を掲げ、主体性を謳歌する現代社会学は、現象学的社会学であれ何であれ、「寄せ場」労働者の「ミジメ」と「ホコリ」をどう抉るのか。彼らの意味世界の内在的理解とは、いかにして可能なのか。そして、これを問う己れ自身の実存構造は、どうあるべきなのか。パラダイムのラディカルな転換を主張しながら、実は、肝心な所で、当の状況から自らを隔離してはいまいか。このような問いかけは、まず筆者自身に向けられる。
「寄せ場」労働者は、差別された人びとである。簡宿街の日雇労働者をこのような観点から捉えた研究は、いまだ存在しない。むしろそのような観点は、タブーであったといってよい。本稿では、既存の簡宿街研究への反省を前提として、「寄せ場」労働者をめぐる差別の構造に関する若干の仮説的提言を試みる。それは、簡宿街研究に新たな問題領域をつけ加えるのみならず、一般に差別構造論の展開にとっても独自の意義をもつものと考える。本稿の課題は、次の通りである。
(一) 「寄せ場」労働者の階級論的規定の差別論的意味について問うこと。
(二) 「寄せ場」労働者の被差別集団としての論理的な形成過程を跡づけること。
(三) 「寄せ場」労働者内部の差別の構造をあきらかにすること。

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