抄録
デュルケームの儀礼論を、サイバネティクスの観点より、「集合力-象徴モデル」を構成することによって、分析する。サイバネティクスとは、パーソンズによると「高情報・低エネルギーのシステムが、高エネルギー・低情報のシステムに有効な制御を行いうる諸条件に関わるもの」とされる。ここで、前項に宗教的信念体系を、後項に「集合力」を当てることによってモデル化を行う。集合力とは、人々のエネルギーが、社会的事実として客体化されたものである。またここで、象徴作用は、記号の媒介によって、集合力を喚起するはたらきと定義される (記号は、なんらかの物質的形式によって、イメージあるいは観念を、指示するはたらきと定義される) 。集合力は、象徴的制御のもとに、種々の社会機能に変換される。
伝統社会の諸儀礼において、集合力は、宗教的象徴作用を介して、社会統合機能、集合表象維持機能に転換される。しかし、集合力は本来、無名のカオスの力であり、新たな象徴に方向づけられて、社会の変革・再統合の力にも転化しうるのである。