社会学評論
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禅と社会学
青井 和夫
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1984 年 35 巻 3 号 p. 248-259

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抄録

本日ここに会長講演をさせていただきますことは、私の最も光栄とするところであります。しかしながら私は、歴代の日本社会学会会長と違いまして、まだ著書らしい本を書いていません。誠に恥かしい限りでございます。
ただ数年前「小集団の社会学」 (1) という本を書きましたところ、多くの方々から多大のご批判をいただきました。批判のうち最も多かったものは、「あれは一体小集団に関する本であるか?」そしてまた「あれは社会学の本であるか?」というものでした。中にはニヤリと笑って、「大分神がかって来たな」という人もいました。と申しますのは、あの本の大部分は先学の方々の理論の孫引きでございまして、交換理論、バランス理論、小集団の深層理論、日常生活世界論のそれぞれについて他人の理論を紹介しては、「まだ不十分だ」とか「駄目だ」といって切り捨ててしまっているからであります。そして最後の章の「禅と社会学」では、今までの社会学理論の全体を否定し去って、何物も残らない「空無」の状態に陥れているかの如き書き方をしています。そこで本日は「禅と社会学」という同じ題目で、大部分は重複いたしますが、少し補足させていただきたいと思います。

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