抄録
本稿は、世代間親族関係における夫方あるいは息子方と妻方あるいは娘方との関係の非対称性について、札幌での調査データに基づいて、理論的に考察したものである。
とりあげた関係項目のうち、五分の二にあたる項目で非対称性がみられた。妻方もしくは娘方優位が十一項目、夫方もしくは息子方優位が九項目である。
われわれは五つの仮説をデータに基づいて検討した。近住説は夫方優位の項目についてはかなり説明力をもつけれども、娘方優位の項目については成立しない。母娘結合を軸とする愛着依存説の妥当性は極めて限定されたものである。いくつかの項目について性別役割説が成立する。多くの妻方優位の項目に関して、主婦の役割における他人継承者との葛藤回避説がある程度有効である。このほか、娘ど息子の間だけでなく長男と次三男の区別がいくつかの項目でみられ、これは家規範説にかかわっている。
全体として、伝統的規範の弱化と妻 (娘) 方優位への変化が推測されるが、いずれにしても、世代間関係の非対称性は、単一要因によってではなく、複数要因によって説明されなければならない。