社会学評論
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組織内移動の分析
沢田 善太郎
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1985 年 36 巻 3 号 p. 350-368,401

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抄録
本稿は組織内移動 (昇進、配置転換など、公式組織内部での成員の地位の移動) を分析するためのモデル作りの試みである。最初に、内部労働市場論や日本の労使関係研究の成果を踏まえて、組織内移動の二つの類型を提案する。一つは、組織成員の熟練を基盤にして形成された「移動群」にそってなされる「組織内連関移動」である。もう一つは、技術革新や合理化にともなう地位あるいは職務のスクラップ・アンド・ビルドによって生じる「組織内強制移動」である。
この二つの移動類型にフォーマルな記述図式を与え、両者の比率や関連を分析するために、本稿では全体社会レベルでの社会移動研究の成果を参照する。とくに注目するのは純粋移動と強制移動の測定に関する安田三郎の議論である。しかし、彼が用いた通常の「移動表」によって組織内移動を記述すると、 (1) 比較の時点の不明瞭性、 (2) クローズド・システムの仮定から生じる困難、 (3) 移動数と移動者数の混同という三つの難点が生じる。組織内移動の分析では比較の時点を厳密にし、オープン・システム・モデルを採用する必要がある。
この条件を満たした「移動累積表」や移動表を用いると、組織内強制移動は周辺分布の比較によって測定でき、組織内連関移動は周辺分布の標準化よって測定できる。また、この二つの指標とモステラー化の方法によって、予測の観点を含んだ組織内移動のモデルが作成できる。
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