社会学評論
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組織システムの制度論的考察
-ルーマン組織理論の批判的展開-
奥山 敏雄
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1987 年 38 巻 1 号 p. 60-76,126

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抄録
従来の組織理論の多くは、組織目標を所与とすることにより、行為を因果的に方向づける構造によってパフォーマンスを因果的に説明するものであった。それは、まず因果的説明自体の難点、その系として、他の可能性を排除して行為を十分に説明しうるほどの強力な組織目標を見出せないこと、さらに組織目標の所与性を前提できないこと、という致命的な困難に見舞われている。本稿では因果モデルの替わりに、そもそも選択が相互に関係づけられて可能にされるメカニズムを明らかにすることにより、どのような選択可能性がシステムに開示されるかという点から、組織のありままの様態をよりリアルに捉えうる理論視点の提出をめざす。それは、様々に異なった視点による選択を、相互に関係づけることによってそもそも可能にするコンテクスト (制度) の解明をめざす制度モデルである。そのために、ルーマンの制度論、それを応用した公式組織論の検討をおこなう。その結果、公式化に基づいた一連の手続という選択の形式的側面によってコンテクストが付与され、そのことによって、公式組織に様々な選択可能性が開示されること。公式化という制度の枠内で、一連の手続の部品の差異が個々の具体的な組織に異なった選択可能性を開示すること。それにより、組織日標の選択、或いはプログラムの選択など構造についての選択が、公式化の制度によってその可能性を開かれたものであり、そうした選択が個々の組織に対して様々に異なった選択可能性を開示するものとして捉えられる。こうして、制度モデルが組織現象の多様性に照準した経験的な組織研究の有効な視点を提供しうることが示される。
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© 日本社会学会
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