社会学評論
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清水幾太郎私論
鈴木 広
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1990 年 40 巻 4 号 p. 414-430

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抄録

清水幾太郎は, 「コントにおける三段階の法則について」を書いて、東京帝国大学を卒業し、五七年の後、再び『オーギュスト・コント』を書いて、社会学者を卒業した。二つのコント研究の間には、正反対ともいうべき、極端な対照がある。このような振幅の大きさは、清水の特有のパターンである。二つのコント像の間に、清水の大衆社会論と社会学説研究のすべてが横たわっているはずである。本稿では、 (一) 清水の人間形成過程における、想像を絶する特異性と、それに由来する、 (二) 彼の地方観、田舎意識の驚くべき未熟さとを手掛りとしてアプローチし、彼の社会学の実体をなしている、大衆社会論の特色、欠陥、限界を示唆する。そして、そのような大衆社会像が、図らずも、次第に日本においても現実のものとなり、彼のニヒリズムが現実化したため、そのような状況を克服すべく、逆に自分自身が、普遍的デモクラットから、日本的ナショナリストへと、転身せざるを得なかった、という秘密を解読する作業に迫りたい。

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