社会学評論
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清水幾太郎の業績とその着想
藤竹 暁
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1990 年 40 巻 4 号 p. 446-460

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抄録

清水幾太郎は、「経験」を基礎にして考え、行動した思想家であり、社会学者であった。清水幾太郎の人生とその業績を明らかにするためには、清水にとって経験とは何であったのかを、探らなければならない。
本稿では、清水が社会学を志望するにいたり、そして三〇歳代前半に、環境と人間に関する清水独自の理論の骨子を形成するまでの、清水の初期の経験を考察する。まず、清水が成長過程で遭遇した個人的、社会的事件を整理し、これらの事件が、清水の思想形成において、どのような経験となったかを考える。次いでマルクス主義が支配する時代状況の下で、ドイツ形式社会学に没頭し、その非現実性に飽き足らず、オーギュスト・コントの研究へたどりつき、さらにアメリカの社会学、心理学、哲学を知るにいたって、コントの人類に関する観念を、清水独自の社会学的な人間の理論へと発展させた過程をたどりながら、清水が経験の概念を確立してゆく経緯を論ずる。
それはまた、思想家そして社会学者としての清水幾太郎が、人生と社会に対して示した姿勢を明らかにすることでもある。

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