1991 年 41 巻 4 号 p. 378-391
本研究は、従来の家族ストレス論に一定の理論的検討を加えることで再構成された家族ストレスモデルを「単身赴任によって残された家族」に対して適用し、その経験的な妥当性および応用可能性を検討しようとするものである。まず、社会システム論の成果を導入することで概念構成ならびに理論モデルの提示を行い、同時にシステムレベルと個人レベルのストレス・適応の識別を図る。操作化された分析モデルの経験的適用の結果、使用されたモデルは単身赴任に対する家族・妻の適応に対して一定の説明力をもつものであることが示された。分析を通じて要件・欲求の設定およびその許容水準を規定すると思われる価値的要因の重要性が明らかとなった。また、システムレベル、個人レベルの適応を規定する要因に差異が示され、主として二つのレベルで生じる問題の質的な相違からその理解がなされるとともに、二つのレベルの識別に一定の有効性が存在することが認められた。