社会学評論
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コミュニティ・クェスチョン
キャンベラにおける検証
野辺 政雄
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1991 年 42 巻 2 号 p. 110-125,221

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抄録

ウェルマンは、現代都市社会における社会的ネットワークの形態に関する、これまでに提出された議論を「コミュニティ崩壊論」、「コミュニティ存続論」及び「コミュニティ解放論」の三つの見解に統合・要約し、「コミュニティ・クェスチョン」と名付けた。本稿では、オーストラリアの首都キャンベラで、結婚あるいは同棲関係にある五十五歳以下の女性が取り結んでいる社会関係を、コミュニティ・クェスチョンの観点から検討し、次の知見を得た。その都市では、地域社会の社会関係は衰退していた。代わりに、その住民は、とりわけ多くの親族・友人関係を持っており、多彩な社会関係を様々な地域に分散して組織していた。そして、遠域ほど社会関係を取り結ぶ相手が多かった。従って、その都市の住民の社会的ネットワークは、コミュニティ解放論の見解に合致する。また、その形態は、キャンベラが中産階層主体の都市であり、流入者が多いということによって説明される。

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