社会学評論
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ポストモダニズムの可能性
今枝 法之
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1991 年 42 巻 2 号 p. 126-139,221

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抄録

ポストモダニズムは、それが相対主義や非合理主義あるいは政治的ニヒリズムを導くとして批判されている。とりわけ、歴史的にファシズム体制を経験しているだけでなく、年功序列的権威主義や集団主義を温存している、日本社会の文脈においては、西欧から輸入されたポストモダニズムの安易な受け入れは極めて危険であると論じられている。同じく、ファシズムを経験したドイツにおいても、ハーバーマスが、ポストモダニズムを厳しく批判している。しかし、民主主義の伝統の根強い英米の論者の間では、ポストモダニズムの肯定的意味合いが認識されている。彼らはポストモダニズムに抑圧的な階層秩序を超克する契機があると考えている。つまり、ポストモダニズムは両義的であり、反動的・保守的な側面と解放的・民主的な側面を有するとされるのである。本稿では、こうした評価をふまえつつ、ポストモダニズムの可能性について検討を行うが、その際、建築におけるポストモダニズムと、ポストモダニズムの政治的転回を試みているポストマルクス主義を参照する。この作業をつうじて、社会理論におけるポストモダニズムの可能性を開示するためには、その概念の新たな定式化が必要であることが示される。

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