抄録
日本におけるイタリア労働者協同組合研究は、これまで労働組合運動と連動した、その運動的側面の紹介が主であり、したがってまた、対象となる地域も他に先駆けて協同組合運動に取り組んできた、産業化の先進地エミリア・ロマーニャ州、トスカーナ州始め、北部イタリアの諸都市が中心的であった。
本稿では、こうした流れを相補する形で、経済的には「後進地」とされてきた南部イタリアに眼を向け、その一つサルデーニャ州において、協同組合がどう機能しているのか、すなわち協同組合が、その地域に固有の問題をどう捉え、どう解決を見いだそうとしているのか、また、その地域に生活する人々が、協同組合という手段を用いて何を求めようとしているのかについて議論を展開する。
経済的にも、また協同組合運動という観点からも「後進地」と称される地域を対象とする所以は、拠点開発による地域振興の行き詰まりを経験する傍ら、小規模ながらも耐久力のある、地域経済の担い手づくりを模索しようとする地域に眼をむけることが、日本の地域的現実との照らし合わせに際しても参考になると考えるからである。