抄録
本稿は、プルードン社会学の中心概念の一つである「真実の社会société réelle」を教育論の視点から分析することにより、それが著しく教育的社会性を帯びた概念であることを明らかにする。
教育的社会は、統制的で保守的、自発的で革新的といった、対立する二つの側面を併せもっている。「真実の社会」は、このうち後者の側面を内包することによって、著しく教育的社会性を帯びる。それは、微視的と巨視的の二つの側面から見て取ることができる。すなわち、微視的にみた場合、この概念の基盤を成す「相互性の原理」と「多元的組織の原理」は、「個と集団との調和」および「個人の自己実現の社会的展開」を目指す点で、教育的社会の自発的側面を内に含むものである。巨視的には、そのような「真実の社会」の拡大・深化による、国家の過剰な政治原理の超克、つまり、プルードンの言う「下からの革命」が、人間の変革による体制の漸進的・創造的な革新といった、教育的社会の革新的側面にそのまま通じる。
こうして、プルードンの社会学および社会主義思想は、教育的社会の性格を内包することによって、これまでの社会主義が抱えてきた過剰な政治主義の矛盾を、新たな地平から越えうる現代性を帯びている。