抄録
本稿では、まずアメリカにおける古典的エスニシティ理論を時代背景も若干考慮しつつ紹介する。次に、これら古典的エスニシティ理論に異論を唱える形で展開してきた、アメリカにおけるエスニシティ理論のなかでも中心的位置を占めている四つの理論について論じていく。「国内植民地論」および「分割労働市場論」は、社会の下層部にとどまらざるを得ないエスニック集団を、「中間マイノリティ論」は、社会の中間位に適所を得たエスニック集団を分析の対象とした。「エンクレイブ論」は、移民社会内部にもホスト社会 (マジョリティ社会) に近似の階層構造が実現し得ることを示唆する。紙幅の制限もあり、周辺的な議論は割愛し理論の核となっているエスニック集団と階層構造の関連を中心にレビューした。最後に諸理論の総括のため図式化を試み、エスニック集団の占める階層的位置は、単一ではなく複数のパターンに分かれることを明らかにした。