日本社会におけるマイノリティの現状と将来の考察は、社会学の重要な課題のひとつである。本稿は、あるマイノリティ組織を考察対象とし、そのエスニシティの様態を把握しようと試みるものである。
そのための手順としてまず、対象組織の成立基盤を明らかにし、次にそのメンバーの意味世界が組織に影響を及ぼす過程を考察する。調査対象は、現在大阪に根拠を置き祖先祭祀や各種親睦活動を行っている親睦組織のひとつ、「在日光山金氏親族会」である。
本研究で得られた知見は以下の三点である。
(1) 血縁によって成立すべき親族会が、本国での出身地域と日本での現住地とに基づくネットワークに大きく依存して成立している。
(2) 世代交代や会員の会への参加意図の多様化により、会の成立基盤や「親睦組織としての親族会」のイメージに揺らぎが生じつつある。
(3) (2) への対応策として会の指導者層によって「民族」的言説が普及されつつある。
これらの知見から、マイノリティのエスニシティを所与としてではなく、生成・変容する過程として捉える視点の有効性を考察する。
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