抄録
本稿の目的は、近年、日常用語となりつつある「グローバライゼーション」を、社会学的な分析概念として批判的に考察することにある。そのために、英米の諸議論の検討を通して、グローバライゼーション概念の中核となる四つのテーゼを次のように明確化する。 (1) グローバライゼーション概念は、先行する諸パラダイムに対するアンチテーゼとして、グローバルな空間を社会分析の対象として提示する。(2) グローバライゼーション概念は、コミュニケーションによる社会生活の時間-空間の再編成という現象に関わる。 (3) グローバライゼーション概念は、多様な要因とアクターによって担われる多次元的なプロセスをあらわす. (4) グローバライゼーション概念は、拮抗する弁証法的なダイナミックスをはらみ、世界の各地で不均等な形で経験される現象を示している。以上の四テーゼを吟味してみると、「グローバル-ローカル・モデル」と呼べる分析視角があきらかになる。要するに、グローバライゼーション概念とは、グローバルな相互依存関係が、どのように拡張し、深化し、ローカルな状況と弁証法的に関連しているかというダイナミックスを包含している社会像なのである。結論として、グローバライゼーション概念の意義は、あたらしい社会のイメージを提示し、社会学におけるコミュニケーションと文化、近代、国家、エスニシティ、時間、空間などの諸問題の再考を迫るものと考えられる。