社会学評論
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バイオテクノロジーと第三世界
大塚 善樹
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1996 年 47 巻 3 号 p. 378-394

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抄録

今世紀以降のバイオテクノロジーの隆盛に伴って進行した農業分野における動植物の再生産の商品化の過程は, レギュラシオン理論における内包的蓄積の概念に倣って「生命の商品経済システムへの包摂」として捉えることができる。この過程は, テクノロジーによる「生命」の不死化が貨幣による不死化に媒介されることによって起こる。この媒介を担う社会関係が「生命の包摂」におけるレギュラシオン様式である。本稿では, そのような様式を国家による還元主義的テクノロジーのマーケティング, 中心国での大量消費規範と第三世界での契約農業制度に見い出した。これらを, 日本資本主義黎明期における蚕の F 1ハイブリッド技術, そしてアメリカ, 日本, タイと転移する飼料トウモロコシとブロイラーのハイブリッド種, さらに近年の「生命」の知的所有権をめぐる南北国家間の対立において例証する。生物多様性や「遺伝子資源」言説は, このような商品化のポスト・フォード主義的状況を反映するものであり, 新たな「生命の包摂」におけるレギュラシオン様式に取り込まれるであろう。

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