社会学評論
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メディアとしての美
圓田 浩二
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キーワード: , メディア, 関係性
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1997 年 48 巻 1 号 p. 32-46

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抄録

人は誰でも, 美というものにかかわって生きている。ある人はバッハの音楽を聴くと無上の喜びを覚え, ある人はルノワールの絵画を見ると心がなごむという。別の人ならば, 夜空の星の輝きにひかれるかもしれないし, 野山に咲く花が好きでよく散策に出かけるというかもしれない。また日本人は夕焼けに美しさを感じる民族であると言われている。これらの人々がバッハの音楽やルノワールの絵画, 星や花という対象に見いだし, 日本人が夕焼けに感じているのは美である。本稿では, これまで社会学では顧みられてこなかった美の問題を, 身体という観点からメディアとしてとらえることによって考察している。その足がかりとなるのは, ルーマンの芸術のメディア論である。そして美は, 準拠するシステムと対象との関係を創り上げるメディア (媒体) として把握される。美は快を付与することによって対象との関係を産み出す, 一般的なメディアである。美のメディア論が展開される上で生じてきた諸問題は, 感情-身体レベルに依拠する美と, そこから自律した美という枠組みを中心に展開されている。そして最後に, メディアとしての美という観点から, ダイエットの事例の分析を試みている。

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