社会学評論
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ポストモダンとハイブリッドモダン
厚東 洋輔
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1998 年 48 巻 4 号 p. 391-406

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抄録
本稿の目的は, 近代日本に生を享けた者として, モダンのもつ普遍的意義と妥当の問題を吟味し直すことにある。明治維新から百年, 日本は非西欧において, 近代化にともかくも「成功」した最初の社会である。日本の近代化は, 西欧からモダンを能率よく移転させることによって達成された。西欧で生まれたモダンは, 異なった文化・文明圏の間を移転することのできる極めて高い能力をもつ文化複合体である。モダンは, 文化移転の繰り返しによりグローバライズされるというのが, その宿命である。19世紀の西欧ではモダンの規格化が進行し, その結果モダンの文化移転の能力は, 世界史上たぐいまれな高さに到達した。日本が際会したのは規格化されたモダンであった。日本は, モダンを「モジュール」へと分解し, このモジュール化されたモダンを手際よく組み立てる形で, 近代世界を構築した。モダンは, 移転される際, 土着からの圧力を受け変容する。モダンが文化伝播によって蒙る変容は「ハイブリッド・モダン」と名づけられ, 歴史的遷移による変容であるポストモダンとは, 概念上区別されてしかるべきである。ハイブリッドモダンの典型が近代日本である。そこではポストモダンに類似する現象が数多く見られるが, その成り立ちは根本的に異なる。ポストモダンが, モダンと内生的伝統とのコンフリクトの帰結だとすれば, ハイブリッドモダンにとって重要なのは, モダンと土着的伝統との対立である。
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