社会学評論
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自我のゆくえ
船津 衛
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1998 年 48 巻 4 号 p. 407-418

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抄録
人間の自我は他の人間とのかかわりにおいて社会的に形成される。自我は, こんにち, 社会の分化・多様化, 変化・変動の進行などによって複雑なものとなっている。そして, 自我は自立的な「個体的自我」から, 依存的な「関係的自我」に変わっている。現代人の自我はいくつもの小さなアイデンティティからなる自我となる。いわゆる「自我の危機」といわれるものは合理的, 自立的, 統一的である「近代的自我」のイメージの消滅であり, 関係的, 多面的・多元的, 感情的, 断片的, 流動的な自我の出現であるといえる。他方, 現代社会に特徴的な「役割コンフリクト」に対して, 人々は「役割選択」, 「役割中和」ないし「役割調整」, 「役割コンパートメント化」によって乗り越えようとし, また, 「役割脱出」を試み, また「印象操作」や「役割距離」行動を行なって対処している。けれども, 「役割コンフリクト」の解決には, 他者の期待に働きかけ, それを修正し, 再構成する「役割形成」が必要とされる。人間は社会構造の現実を認識し, それに意味を付与し, それにもとついて自己をリフレクションする。そして, 「内的コミュニケーション」を活性化して, 「解釈」過程を展開することによって, 主体的な行為を形成し, 社会の変容を行なうことができるようになる。
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© 日本社会学会
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