社会学評論
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最小限の合意の可能性
数土 直紀
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キーワード: 最小限の合意, 寛容, 主張
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2000 年 50 巻 4 号 p. 496-508

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抄録
本稿の目的は, 我々が他者と共に生きていくためにこれから何が必要とされるのかを解明することである.このことが問題にされなければならない理由は, 大規模化し複雑化しつつある現代社会においては, 他者と共に生きていくことがいよいよ困難になるであろうことが予想されるからである.本稿では, 最初に, 我々が日常において他者とどのようにして合意を形成しているのかを分析する.他者との間に何らかの合意を持つことは, 共生のためのもっとも基本的な条件だと思われるからである.しかし, 本稿で明らかにされることは, 我々のこれまでの合意形成の仕方が, 現代社会においては自ずから限界を持たざるをえないことである.次に, 我々がこれまで用いてきた合意形成の手段が有効でない場合には, 最小限の合意が有効であることを主張する.最小限の合意とは, 互いの理解のしがたさに関する合意である. そして, このような最小限の合意は, 寛容と主張という新たな戦略を可能にする.新たに示される戦略は, 我々がこれからの社会を他者と共に生きるためには我々自身が大きく変わっていかなければならないことを示唆するだろう.
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© 日本社会学会
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