社会学評論
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相談と情報交換
パーソナルネットワークの機能
安田 雪石田 光規
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2000 年 51 巻 1 号 p. 104-119

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抄録

個人は日常生活において多重化したネットワークに所属し, それぞれのネットワークから異なる影響を及ぼされている.本研究においては, 我々が実施した「先端情報通信企業従業員の仕事とネットワークに関する調査」 (1998) データを用い, 企業従業員が職場で保持する相談ネットワークと情報交換ネットワークを抽出し, 両ネットワークの構造特性と従業員の意識との関連を分析した.分析の結果, (1) 従業員は相談ネットワークと情報交換ネットワークを異なるものとして認識しており, その内部構成には差異があること, (2) 相談ネットワークと情報交換ネットワークでは, それぞれ異なる構造特性が従業員意識に対して影響を及ぼしていることを検証した.相談ネットワークについては構成者の属性が, また情報交換ネットワークについてはネットワークの大きさが意識と強い関係をもつ.相談ネットワークについては現在の上司および部下という制度的に規定されたフォーマルな関係が占める割合が高いほど, 情報交換ネットワークについてはネットワークの構成者数が多いほど, 従業員は高い職場意識をもつ.相談ネットワークは保持者とネットワーク構成者の間に互酬性がなく非対称な関係が成立しているが, 情報交換ネットワーク内では互酬性があり対等な関係が成立していることから, この差異が生じると解釈できる.

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© 日本社会学会
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