社会学評論
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近世農民社会における世帯構成のサイクル
二本松藩2ヵ村の史料を用いて
岡田 あおい
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2000 年 51 巻 1 号 p. 136-152

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抄録
本稿の目的は, 徳川後期農民社会の世帯構成を分析することである.具体的には, 世帯構成のサイクルと循環年数を観察することである.史料には, 150年間におよぶ二本松藩2ヵ村の人別改帳を用い, 世帯構成の分類には, ハメル・ラスレットモデルを修正して用いることにした.
観察の結果から, 世帯構成には階層による違いがあることが判明した. 土地を保有している階層は, 定住率が高く, 直系家族世帯の割合が高い.さらに, 直系家族世帯を形成するサイクルも30%以上発見できた.これに対して, 土地を所持していない階層の定住率は低い.この階層の約半数は定住期間が5年以内である.また, 直系家族世帯の割合も低く, 単純家族世帯と単独世帯の割合が高い.しかし, それ以上にこの階層の特徴といえるのは世帯構成のサイクルそのものがまったく観察できなかったということである.
この観察結果から, 徳川後期の東北農民社会の世帯構成は直系家族世帯がその典型であったということは可能であろう.ただし, これはあくまで土地を保有している階層の農民世帯にあてはまることであり, 土地を所持していない階層の農民世帯にはあてはまらない.したがって, 徳川期農民社会について論じる際に, 直系家族システムをその前提として論じることは留意すべきである.同じ村に住み, 同じ農民という身分に属しながらも, 階層によってまったく異なる社会的経済的環境を形成していたのである.
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