社会学評論
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ポスト・サバーブに関する一考察
郊外化の進展とメルボルンの居住動向の事例
水上 徹男
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2000 年 51 巻 2 号 p. 251-263

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抄録

「郊外」は, 多くの先進工業国において第二次大戦後に著しく発展して, 理想化された生活世界のイメージのもとに, 戦後の神話的世界を形成した. また, アメリカ合衆国やオーストラリアでは現代の生活様式の典型としても認識されるに至った. 本稿では, 戦後の郊外化の進展およびポスト・サバーブ論に関して考察する. 急速な郊外化の背景には, 都市政策として組織的に住宅開発が進められたこと, 中間層として郊外居住が可能である人々が急増したこと, 理想的な郊外生活のイメージが浸透したことなどがあり, 物質的な環境と価値基準としての郊外志向が相俟っていた.
継続的に進展する郊外化は, 一部の大都市において大都市構造が変化するほど都市周縁部へのスプロール化をみている. このような状況がポスト・サバーブ論の課題となり, 「郊外」の終焉による新都市形成という論議が登場した. 他方では, 大都市周縁人口を郊外生活者に含めた郊外延長論に基づき, 21世紀は郊外の時代となるという観点もある. 中心街を取り巻く従来の郊外地域をさらに離れた都市周縁の生活者が増加して, それに伴うサブ・センターの発達が顕著であるメルボルンでは, 1990年代になって公共支出削減のために「コンパクト・シティ」構築が都市政策の主要課題となった. 本稿では, オーストラリアの大都市の中でも都市周縁人口の増加に注目されるメルボルンの居住動向を参照に, 戦後の郊外化の進展とポスト・サバーブの実情について考察する.

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