社会学評論
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新たなカリスマ論をめざして
W.ゲープハルトの「生活形態としてのカリスマ」を中心に
黒木 茂浩
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キーワード: カリスマ, 制度, 正当性
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2000 年 51 巻 3 号 p. 282-297

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抄録

本稿の目的は, 現代ドイツの社会学者であるヴィンフリート・ゲープハルトの「生活形態としてのカリスマ」理論を取り上げ, その意義について検討することにある.この目的のため本稿は, 第1に, 「生活形態としてのカリスマ」の意味内容を明らかにする.その際, 「生活形態としてのカリスマ」は, カリスマの日常化にともなう制度形成への抵抗である「特殊制度」を通じて維持される, 「純粋」カリスマ的な生活形態として表現される.第2に本稿は, ゲープハルトのカリスマ論がもつ独自性を, 従来の諸研究との比較を通じて浮き彫りにする.その独自性とは, 社会秩序とカリスマとの「共存」の可能性という論点と, 「外部」から強制された「内省」を通じて引き出される, 制度の「正当性」という論点である.第3に本稿は, 「生活形態としてのカリスマ」理論の適用可能性について議論する.その可能性の一つとして, この理論は, 「個人化・多元化」によって特徴づけられる現代社会における, 制度の正当化プロセスを解明するために用いられうる.ゲープハルトの試みは, カリスマ概念において今まで顧みられることのなかった含意や側面に注目することによって, カリスマ論の新しい方向性を切り開くものであるといえる.

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