社会学評論
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戦後日本の革新政党支持率低下
階層意識論からのアプローチ
井出 知之
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2000 年 51 巻 3 号 p. 298-313

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抄録
55年体制成立直後の革新政党は, 産業化にともなう雇用者化, 高学歴化, 都市化によって支持率上昇が予想された.だが, 実際の支持率は大きく低下した.この論文の目的は, これまでの戦後日本での革新政党支持率低下の研究から, 価値意識的な要因を重視した説明と社会階層に関連する要因を重視した説明を取り上げ, 後者の優位性を示し, 説明のメカニズムを検討するものである.社会階層の政党支持への影響は, 日本の政党支持意識研究では非常に軽視されてきた.だが, 先述の革新政党支持意識の低下については, むしろ, 階層的な要因による説明が非常に有効ではないかと考えられる.しかも, 口本の政党支持意識研究では必ずしも重視されていない合理的選択のメカニズムが, そこに働いていると考えられるのである.分析結果から第1に, 財産の構成変動は革新政党支持率の低下をよく説明できる.第2に, 財産の構成変動が政党支持意識に影響するメカニズムについても, 価値意識や社会的ネットワーク理論による説明よりは合理的選択理論を仮定した方がよいと考えられる.このようにして階層的な要因による説明の優位性が示される.ただし, 合理的選択による説明には, 革新政権による利得分配が支持の動機としてどれほど有効であったのか疑問が残る.今後, この点は検討する必要があるだろう.
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