社会学評論
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男女にみるエイジング・役割累積・ディストレス
-社会的文脈としてのライフステージ-
菊澤 佐江子
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2001 年 52 巻 1 号 p. 2-15

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抄録

役割累積とディストレスの関係性の探索は, 社会構造と個人の内面的状況との結びつきを明らかにし, 社会学理論に貢献してきた.しかし, これまでの主な研究対象は, 成人・中年期であり, 高齢期を対象とする研究は希少である.エイジング研究に指摘されている加齢による役割変化は, どのように役割累積効果に現れるであろうか.本稿は, このような研究関心のもと, 役割累積とディストレスの関係がライフステージによってどのように異なるかを分析した.1998年度全国家族調査データを用いた分析の結果, 男性については, 役割累積とディストレスの関係は成人・中年期においては強いが, 高齢期には弱いことが明らかとなった.特に, 成人・中年期にみられた顕著な就労役割効果が, 高齢期にはみられなかった.また, 成人・中年期には, 妻子をもつ働く男性とその他の役割保有パターンの男性との間に, 顕著なディストレス差がみられたが, 高齢期にはほとんどみられなかった.一方, 女性については, 男性ほど顕著なライフステージ差はみられなかったものの, 役割累積とディストレスの関係は, ささやかながら, 高齢期に強まるという興味深い結果が得られた.また, この結果, 成人・中年期にみられた役割累積効果の性差が, 高齢期にはみられなかった.考察では, なぜこのような結果が得られたのかを議論した.

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