社会学評論
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音楽の合理化
マックス・ウェーバーの『音楽社会学』における近代音楽の二重の合理化について
和泉 浩
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2002 年 53 巻 1 号 p. 54-69

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抄録

音楽という芸術を, 合理化の視点からとらえることはできるのであろうか.もしそれが可能であるとすれば, 音楽の合理化の西欧近代における固有の特性とはいったいどのようなものなのであろうか.未完の草稿として残された『音楽社会学』においてマックス・ウェーバーが探求しようとした, この西欧近代音楽の合理化の過程を, 西欧音楽における二重の合理化という視点から読み解くことが本稿の試みである.
ウェーバーが音楽を社会学の対象にしたのは, 音楽に用いられる音組織が歴史的に構築されるなかで, 理性がきわめて重要な役割をはたしてきたことを見出したためである.ウェーバーは, この音組織を歴史的に構築してきた原理を, 間隔原理と和声的分割原理という2つの原理に区別する.この2つの原理にもとづき, 音組織は間隔的に, あるいは和声的に合理化されてきたのである.この2つの合理化は互いに対立するものであり, 他方のものに非合理, 制約, 矛盾をもたらす.ウェーバーの議論は一見, 近代の西欧音楽を和声的合理化においてとらえ, それ以外の音楽を間隔的合理化において特徴づけているようにみえる.しかし, 西欧近代の音楽の合理化の特性は, この対立する2つの合理化の交錯においてかたち作られているのである.この西欧近代音楽の合理化の矛盾した関係を明らかにすることこそ, ウェーバーの音楽社会学の試みである.

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