社会学評論
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ポピュラー音楽文化を媒介する企業活動
クラブ・イベントにおける企業スポンサーの事例から
木本 玲一
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2003 年 54 巻 1 号 p. 97-112

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抄録

本稿は, ビール企業によるヒップホップ系クラブ・イベントのスポンサー業務を事例としたエスノグラフィーである.ヒップホップは, 一方でサブカルチュラルな実践によって特定されるが, 他方でレコード産業などによって媒介される商業的側面を持っている.こういった傾向は, ロックなどの他のポピュラー音楽文化と共通する傾向である.既存の議論の文脈では, ポピュラー音楽文化の商業的側面を媒介するものとしては, レコード産業などが想定されており, 一見当該文化と「無縁」であるような企業の販促活動を通した媒介の契機などは, それが決して珍しいことではないにもかかわらず, あまり注目されてこなかった.そこで本稿において私は, ビール企業によるヒップホップ系クラブ・イベントにおけるスポンサー業務に注目する.具体的にはまず, 企業の経済的利害関心によって規定されたスポンサー業務において, 関係者がとりわけヒップホップにおける文化的真正性を意識していることを論じる.次に, スポンサード・イベントの関係者が, そういった企業の思惑との関わりの中でいかにイベントを運営していったのかを論じる.そして企業とイベントの関係者が相互媒介的に各々の営為を行っていることを確認し, ヒップホップが音楽産業などの営為に限定されない, 多様な媒介の契機をはらんでいることを論じる.

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