抄録
5時点のSSM調査データをもちいて, 世代内=平等化効果仮説を検討した.この仮説は, 第1に世代内移動が現職までの世代間移動を平等化すること, 第2に世代間移動の時代効果による平等化がその時期の世代内移動の流動化によって作りだされることを指摘する.ロジスティック回帰モデルによって分析したところ, 第2の仮説には整合しない知見もあったが, 第1の仮説をほぼ支持する結果がえられた.初職時の移動機会格差については, 時間的に変化せずに一定の階層と, 若いコーホートほど縮小する階層があった.現職時の移動機会格差は, ほとんどの階層で, 時代・コーホート・年齢のいずれかとともに縮小していた.これら初職時と現職時の継承傾向を比較して世代内移動の世代間移動にたいする影響を検討した結果, 全体として, 世代内移動による平等化作用が確認された.