社会学評論
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55 巻, 4 号
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  • 鹿又 伸夫
    2005 年55 巻4 号 p. 384-399
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    5時点のSSM調査データをもちいて, 世代内=平等化効果仮説を検討した.この仮説は, 第1に世代内移動が現職までの世代間移動を平等化すること, 第2に世代間移動の時代効果による平等化がその時期の世代内移動の流動化によって作りだされることを指摘する.ロジスティック回帰モデルによって分析したところ, 第2の仮説には整合しない知見もあったが, 第1の仮説をほぼ支持する結果がえられた.初職時の移動機会格差については, 時間的に変化せずに一定の階層と, 若いコーホートほど縮小する階層があった.現職時の移動機会格差は, ほとんどの階層で, 時代・コーホート・年齢のいずれかとともに縮小していた.これら初職時と現職時の継承傾向を比較して世代内移動の世代間移動にたいする影響を検討した結果, 全体として, 世代内移動による平等化作用が確認された.
  • 障害学における新たな機軸として
    後藤 吉彦
    2005 年55 巻4 号 p. 400-417
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    本稿はまず, 身体的損傷 (インペアメント) ではなく社会的障壁こそが障害者にとっての問題=障害 (ディスアビリティ) であると主張する「障害の社会モデル」を紹介し, その功績と意義を確認する.そのうえで, 「社会モデル」に内在する問題-身体・インペアメントについての「生物学的基盤主義」, ひとを障害者/健常者とカテゴリー化することを容認するアイデンティティ・ポリティクス-を批判する.そして, それを補うべく, 障害学, 社会学に必要とされるのは, 障害者/健常者カテゴリーを不安定化させるような取り組みであると指摘し, そのためには「基盤主義」を徹底的に問いなおし, “障害者の身体” や “健常な身体” という概念を脱自然化させて捉えなおす視点が重要であると主張する.
    本稿の後半では, “健常な身体” の不安定さ, 不可能性を論じたM. Shildrickの著作をとりあげ, さらに, 彼女の議論を参照しながら, 障害者の〈逸脱〉した身体を健常者の〈標準〉なものに近づけるべくおこなわれるリハビリや整形治療について検証する.
  • 読む・ふれる・見る
    谷本 奈穂
    2005 年55 巻4 号 p. 418-433
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    本稿では複数ある「ものの見方=視覚モード」を整理する.
    「言葉」をモデルにして対象に潜む意味や物語やイデオロギーなるものを「読解」するというモードや, 「芸術作品」をモデルにして対象と (論理を媒介にしない) 「直接的交流」をするモードが考えられる.
    しかし現代においては, メディア (広告ポスター, テレビ, マンガ, インターネットの動画) をモデルにした視覚モードもある.本稿ではそのモードを〈イメージ〉の生成と名づけた.
    このモードは「じっくり鑑賞する」というより「ちらっと・ぼんやり散見する」点, 対象に表層と深層があるとするなら「深層」ではなくて「表層」に焦点を当てる点に特徴がある.
    また〈イメージ〉の生成の登場は, 人が魅惑に対してむしろ醒めて麻痺したような態度を取るようになったことを意味している.
  • 原田 謙, 杉澤 秀博, 浅川 達人, 斎藤 民
    2005 年55 巻4 号 p. 434-448
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, 大都市部に居住する後期高齢者の社会的ネットワークの諸特性が, 精神的健康に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.データは, 東京都墨田区の75歳以上の在宅高齢者, 合計618人より得た.精神的健康度は, ディストレス (GDS短縮版) および生活満足度を用いて測定した.分析の結果, 以下のような知見が得られた.
    (1) 男性では, 配偶者がいる者ほどディストレスが低く, 生活満足度が高い傾向が示されたが, 女性では, 配偶者の存在は有意な効果をもっていなかった.
    (2) 女性では, 子どもがいる者ほど, ディストレスが低く, 生活満足度が高い傾向が示されたが, 男性では, 子どもの存在は有意な効果をもっていなかった.
    (3) 男性では, 近距離友人ネットワークが生活満足度を高め, 女性では, 中遠距離親族ネットワークがディストレスを低め, 生活満足度を高める効果をもっていた.そして, 伝統的な近距離親族ネットワークに埋め込まれていることが, 必ずしも精神的健康を高めるわけではない点が示唆された.
    (4) 女性では, 地域集団参加数が多い者ほどディストレスが低く, 生活満足度が高かった.この知見は, 後期高齢期におけるストレスフルな状況に適応するための資源として, 地域集団が有効であることを示唆していた.
  • 健康に関する書籍ベストセラーの分析を通して
    野村 佳絵子, 黒田 浩一郎
    2005 年55 巻4 号 p. 449-467
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    日本では, 1970年代の半ば頃から, 人びとの健康への関心が高まり, それまでよりも多くの人びとが健康を維持・増進するための行動を心がけるようになったといわれている.周知のとおり, これらの現象は「健康ブーム」と呼ばれている.医療社会学では, このような「ブーム」の背景に, 「健康至上主義」の高まりを想定している.しかし, 「健康ブーム」も「健康至上主義」の高まりも, それらの存在を裏付ける証拠はいまのところ存在しない.そこで, 本論では, 書籍ベストセラーが人びとの意識や関心を反映しているとの仮定のもとに, 健康に関するベストセラーの戦後の変遷を分析することを通して, 人びとの健康についての意識の程度やあり方の変化を探った.その結果, 健康に関する本のベストセラーは1970年代の半ばに初めて登場したわけではなく, 1950年代後半から今日まで, そう変わらない頻度で現れていることが見出された.また, 「健康ブーム」といわれる時期の初期およびその直前には, 医学をわかりやすく解説する啓蒙書がベストセラーになっていることが発見された.したがって, 1950年代後半から今日まで, 人びとの健康への関心の程度にはそれほど変化がないということになる.また, 「健康ブーム」とされる時期に特徴的なことは, 健康への関心の高さではなく, むしろ, 健康に良いと信じられていることに対する批判的な意識の高まりではないかと推測される.
  • 性・年齢・地域別自殺死亡率の経年分析
    佐々木 洋成
    2005 年55 巻4 号 p. 468-482
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    男性中高年と特定地域の自殺が社会問題となっている.本稿ではアナール学派社会史のアプローチを採用して経年的検討を行い, 現状に至った歴史的経緯を把握する.理論枠組はMertonのアノミー解釈 (欲求と充足手段の乖離) を参照し, 自殺死亡の変動をアノミー状況の変化の指標と位置づけた.使用したデータは, 『人口動態統計』の, 1899年から2002年までの男女・年齢層・都道府県別自殺死亡率である.
    検討の結果, 高度経済成長期の自殺死亡率が例外的に低いこと, 今日の問題状況はこの時期におこった構造的な方向転換によるものであることがわかった.日本全体は, 1960年代の急激な下降の後, 漸次的な上昇を続けている.性別では, 1960年代に男女差が縮小するとともに70年間続いた連動が終了し, 女性は緩やかに下降する一方で男性は上昇している.男性の上昇は50代とその前後に顕著であり, 経年加算的に高まる傾向がみられる.1960年代には地域差も圧縮し, その後は低水準を維持する地域と上昇する地域とに区別され, 「東海道ベルト地帯が低く, 低開発地域が高い」構成へと再編されている.
  • 1920年代後半日本における街路照明の問題化をめぐって
    近森 高明
    2005 年55 巻4 号 p. 483-498
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2010/04/23
    ジャーナル フリー
    本稿の目的は, 1920年代後半の日本社会における街路照明の問題化という事例の検討をつうじて, 街路空間における照明の管理化という技術=政策上のプログラムが, いかなる歴史的・社会的条件のもとで成立したのか, そしてまた, それがどのように実践的に展開された (されなかった) のかを明らかにすることである.技術の社会構築主義的な観点のもとに, 科学的知, 都市政策, 事業者や一般市民を代表する各種領域の言説をたどることで, 以下の3つのテーゼが導かれることになる.第1に, 照明の社会的な管理化は, 銀座のガス灯など, 近代的な照明装置の導入を起点として直線的に展開していったプロセスではなく, それじたいが, 1920年代後半にはじめて対象化され問題化されたプログラムであるということ.第2に, 照明の規格化や標準化は, 個人や私的団体に所有される多種多様な形態の照明装置を抑えこみ, 馴致するようなしかたで目論まれたということ.そして第3に, こうしたプログラムが言説的に形成され, 実践的に展開される過程には, 利害を異にする複数の主体がかかわっており, しばしば意図せざる結果や効果が生みだされてきたということである.
  • 再帰的近代におけるリスク処理の形式としての監視
    鈴木 謙介
    2005 年55 巻4 号 p. 499-513
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    「セキュリティの強化」と「監視」を巡る問題が近年になって特に注目されるようになった.ここでいうセキュリティの強化とは, 単なる監視カメラの設置による監視の氾濫を指すのではなく, 予防的措置の極大化によって, あるシステムにとってふさわしくない人間をあらかじめ排除するという動きの全体を指している.
    こうした監視の強化と排除に対して批判を加えることは一見容易に見えるが実はそうではない.その理由は, 監視を批判しようとすることが監視によって実現される価値への批判へとすり替えられていくからである.例えば監視による排除が階層格差を前提にしている場合, それは格差批判にはなっても監視そのものを批判することはできないのだ.
    本稿ではこうした監視批判の困難を乗り越えるために, どのようなシステム作動によってセキュリティの強化が行われているのかを分析した.その結果明らかになったのは, 監視を行うことそれ自体がマシンによるデータ管理の自動化によって監視対象を外部から不可視化する作用を持つこと, そして, そのような外部に対する不可視化がさらに内部に対して過剰な可視化を呼び出し, 内部のロジックが一種の道徳律として機能するということだ.監視批判が困難なのは, この2方向の力の作動が存在するからだと考えられる.
  • 2001年から2003年を中心に
    関 礼子
    2005 年55 巻4 号 p. 514-529
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2009/10/19
    ジャーナル フリー
    日本での環境社会学という学問の制度的形成は, 1990年の環境社会学研究会設立に遡ることができる.農村社会学, 公害問題研究, 社会運動研究など, 個々の視点から環境にアプローチしてきた諸研究が, 環境社会学という新たな領域に焦点を結んだ年であった.それから僅か2年後, 国際的にも国内的にも環境に対する関心が高まった1992年に環境社会学会が創設された.以後, 環境社会学は, 実証研究の積み重ねによる理論形成と環境問題解決への志向性を特徴に展開をみた.
    本稿では, はじめに環境社会学の学問的特徴は何か, どのような理論の体系化がみられるかについて論じる (1-2節).そのうえで, 近年の環境社会学の研究動向を, 公共性, イデオロギー, ローカルとグローバル, 格差と差別という, 相互に関連する4つのテーマから掘り下げて論じてゆく (3-6節)
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