日本での環境社会学という学問の制度的形成は, 1990年の環境社会学研究会設立に遡ることができる.農村社会学, 公害問題研究, 社会運動研究など, 個々の視点から環境にアプローチしてきた諸研究が, 環境社会学という新たな領域に焦点を結んだ年であった.それから僅か2年後, 国際的にも国内的にも環境に対する関心が高まった1992年に環境社会学会が創設された.以後, 環境社会学は, 実証研究の積み重ねによる理論形成と環境問題解決への志向性を特徴に展開をみた.
本稿では, はじめに環境社会学の学問的特徴は何か, どのような理論の体系化がみられるかについて論じる (1-2節).そのうえで, 近年の環境社会学の研究動向を, 公共性, イデオロギー, ローカルとグローバル, 格差と差別という, 相互に関連する4つのテーマから掘り下げて論じてゆく (3-6節)