社会学評論
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民主的コミュニティ放送の可能性とデジタル社会
社会運動を接地させる地域社会のメディア環境
松浦 さと子
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2006 年 57 巻 2 号 p. 330-347

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抄録

商業性や政治権力からメディアのガバナンスを取り戻そうとするメディアの民主化運動は, 欧米のみならずアジア各国にも及んでいる.
その実践は, インターネット等の電子メディアの普及とも並行し, 市民ジャーナリズムがかつてミニコミでは得ることができなかった影響力を拡大している.
運動当事者は電子メディアを活用し, マスメディアのエディター・エイドに過度に依存することなく, 独自に活動の現場でデータベースを形成し, 議論や交渉の資源としてそれらの情報を有効に蓄積している.しかし, 社会運動が制度化された法人の形態をとるようになると, それに伴い経済的な持続可能性や公開性が要請され, 委託や助成での行政や企業との協働関係と同時に, そこに依存しないマネジメントが必要になる.そのためにまず顔の見えるコミュニティに根ざした支持が要請されるのではないか.
メディアの民主化が, メディアへの市民の主体的参加だとするならば, それを持続する装置としての市民メディア活動こそがメディアの民主化運動だと言える.その持続装置のために少額でも多様で多数のコミュニティの人々からの経済的支援とさまざまな協力, 支持が必要である.
神戸で開催されたFMわぃわぃ10周年記念の一連のシンポジウムから, 大資本に頼らず地域社会に依拠した経済循環を持つメディアの自立性の確保こそが日本におけるメディアの民主化運動となっている状況を報告する.そして, コミュニティの日常的な多様性確保のための情報回路の維持について論考する.

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