社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
地方からみた「社会運動論」
新潟県 (旧) 巻町における2つの住民投票への対応の差異を通じて
渡辺 登
著者情報
キーワード: 社会運動, 住民投票, 地方
ジャーナル フリー

2006 年 57 巻 2 号 p. 348-368

詳細
抄録

グローバリゼーションの進展とそれに対応する新自由主義的改革=「構造改革」の一環としての行財政改革を目的とした「平成の大合併」によって, 地域社会でのさまざまな共同性, 協働性が溶解しつつある現状と向き合う中で, 一体私たちは何を語り得るのか.本稿では, 原発建設の是非を問う全国で初の住民主導による住民投票を実施して原発建設計画を白紙撤回に導き, 今回の「平成の大合併」では行政主導の住民投票で新潟市への編入合併を選択した新潟県 (旧) 巻町を事例とし, 原発建設計画への住民投票運動において中心的な役割を果たした住民グループの主要メンバーへのインタビューを通じて得られた彼ら・彼女らの「語り」に着目することで, 以上への回答を試みた. (旧) 巻町の事例への検討を通じて, 地域におけるさまざまな人々の問題解決のための営為を彼ら・彼女らの語りから, 解釈し, 再構成し, 地域で紡ぎだされつつある, あるいはそのためにせめぎ合うさまざまな力の交錯の物語を丹念に描き出すことが重要であることはもちろんであるが, 特に確認すべきは, それぞれの人々の多様な捉え方, 位置づけかたを, 彼らの日常的営みからの活動に寄り添いつつ, その語りをコンテキストに沿いつつ再構成し, 関連づけ, 意味づけを行う作業を, 絶えず私たちの自明の前提を問い直しながら行うことが不可欠であるということである.

著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top