社会学評論
Online ISSN : 1884-2755
Print ISSN : 0021-5414
ISSN-L : 0021-5414
A. シュッツの思惟における我々の領域と社会科学
M.ブーバーの我-汝関係概念を媒介として
飯田 卓
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 57 巻 2 号 p. 385-401

詳細
抄録

本稿の目的は第1に, 社会学において十分に考察されてきたとは考え難い対象化, あるいは類型化という概念に焦点を絞ってA.シュッツの我々関係概念を再構成し, 伝統的な社会学理論が暗黙裡に観察対象に帰属させてきた, ないしは観察対象自体が有すると想定してきた主観-客観図式の一面性を呈示することにある.その際, ことに対象化概念の検討において, シュッツと同様に我々の領域を主題化し多くの見識を共有するM.ブーバーの我-汝関係概念が有効な手引きになる.
第2に, 我々の領域という議論の射程にある2つの着想を呈示する目的がある.1つは, 社会的対象の構成と対象の社会的構成との区別を背景に, 人格生成と世界構成の相関がそこで開示される社会化に関する洞察である.今1つは, 社会科学の哲学的基礎づけの基調である.およそ社会科学は, 自明性を所与の前提として事象内容をともなった経験的命題を導こうとする.だがこのような事実学は, 前科学的生において中心的位置を占める前述定的位相を主題化しえず, したがってこの位相を考察の対象外として等閑視せざるをえない.
果たして本稿では, 意識の志向的分析に定位することによって析出される生活世界の本質構造が, 事実学には原理的に接近不可能な「世界を構成する人間の諸可能性」を開示するだけではなく, まさしくそうした日常知と学知との「適合性を確保する形式的な準拠枠」たり得ることが確認されるだろう.

著者関連情報
© 日本社会学会
前の記事 次の記事
feedback
Top