社会学評論
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仕事の自律性からみた雇用関係の変化
長松 奈美江
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2006 年 57 巻 3 号 p. 476-492

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抄録

近年, 雇用調整や労働強化などにみられるように, 被雇用者の管理のあり方が変化している.被雇用者がもつ仕事の自律性の「水準」と, 被雇用者間での仕事の自律性の「規定構造」の変化に注目することで, 近年の雇用関係の変化を検証した.被雇用者がもつ仕事の自律性の「水準」は, 業務遂行において, 被雇用者と雇用主のどちらの意思がより貫徹されやすいかを表す.仕事の自律性の「規定構造」は, どのような特性をもつ被雇用者が, 雇用主との関係においてより有利な立場にあるかを表す.
1979年の「職業と人間」調査, 2001~02年の「情報化社会に関する全国調査」を用いて, 仕事の自律性の「水準」と「規定構造」が変化したのかどうかを, 仕事の自律性の多母集団同時解析による検証的因子分析と, パス解析によって確認した.その結果, 男性被雇用者の仕事の自律性の「水準」は低下し, 「規定構造」に関しては, 学歴の効果の低下, 職業威信と年齢の効果の増大がみいだされた.職業威信の仕事の自律性への効果は, 職業威信による技能 (仕事の非単調性) の違いと, 解雇されやすい立場を表すパート・アルバイト率の違いによって媒介されていた.被雇用者の管理のあり方が変化し, 被雇用者の仕事の自律性の水準が低下するなかで, より解雇されにくく, 専門性の高い仕事をする被雇用者が, 仕事の自律性を奪われない有利性をもつようになったといえる.

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