2007 年 57 巻 4 号 p. 748-762
グローバリゼーションの進展は, 「グローバルな女性の連帯」というフェミニズムの理想よりもむしろ, 国家や民族を異にする女性たちの問にさまざまな意見の対立や意識の違いがあることを浮き彫りにした.それは, たとえば欧米社会において, 専門職につく白人女性が家事使用人として有色の移民女性を雇うという現象にも現れている.この現象は, 近代社会の根幹を成してきた公私区分の前提を切り崩す可能性をもつという意味で, 深刻な社会「問題」として捉えられる.二人の女性は, 公私区分の狭間で直接出会い, 圧倒的に不均衡な権力関係の中に放りこまれる.ここで問われているのは, 「私的領域における公的関係」という新しいかたちの社会関係を, どのように「自由で対等な関係」として生きることができるのか, というきわめて困難な問題である.それを解く鍵は, おそらく「心の自由な空間」としての「個人的なものの領域」を尊重するということのなかにある.それが他者との共在の可能性を切り拓くのである.