グローバリゼイション (地球化) の議論が社会科学で姿を現したのは1991年頃と言ってよい.それは, 日本の文脈ではバブルの崩壊期, 世界政治の文脈ではヨーロッパ現存社会主義の崩壊期なのである.ギデンズが気付いていたように, 近代科学である社会学が対象としてきたのはもっぱら「民族国家」なのであった.そこで筆者は, 第1において, 新しいテーマ化「ヴァーチュアリティ (擬似現実) 」とも絡んでくる社会哲学考察, 「イデオロギーと社会学」を扱い, エミール・デュルケームの死後まとめられた論集『社会学と哲学』 (1924) の示唆するところ, および最も包括的イデオロギー概念を展開したジェルジ・ルカーチの『社会的存在の存在論』 (1964-71) 等をたよりに新しいイデオロギー類型論へ及んだ.
第2に, 「近代と社会理論」においては, 近代の出自論を明確にした上で, 今日最も影響力のある4人の理論家, ニクラス・ルーマン, ユルゲン・ハーバーマス, ピエール・ブルデュー, そしてアントニー・ギデンズの近代理解を検討に付すことで, 新しい社会学理論の必要性を論証した.
結論として第3に, 筆者積年の社会学理論「ポストモダン状況論」の骨子について触れ, グローバル化した現代にふさわしい6つのカテゴリーを提示した.すなわち, 社会水準では, フェミニズム・エスニシティ・エコロジーであり, 哲学水準では, 欲望・他者・自然である.社会的距離化テーゼとともに感情の普遍性テーゼをも展開した.
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