抄録
星間,環境,生命等の様々な化学研究分野において,光および放射線照射によって生じる分子イオンの構造や反応性,そしてその溶媒和に強い興味が持たれているが,それらの詳細を凝集相中で探ることには大きな困難がある.真空中に取り出した分子集合体である気相分子クラスターは,分光手法と理論計算の適用により,分子イオンに関する微視的情報を得ることを可能とする.近年のラジカル正イオンクラスターの研究例として,水の正イオンクラスターにおける水素結合構造の解明,プロトン性分子正イオンの半結合形成の観測,イオン化に伴うプロトン供与性の増大,そして光イオン化誘起反応における水分子の触媒効果について紹介する.